小唄と踊りと着付けのお稽古日記

小唄と踊りと着付けの教室「遊芸の稽古所・はしもと」の生徒たちがつづる日記ブログです!
初心者にも分かりやすく本格的なお稽古をやってます。

芝居

歌舞伎座の顔見世では、昼の部の「直侍」夜の部の「新口村」、江戸と上方の雪景色が並んだ。

梅川忠兵衛の、
「あたためられつ あたためつ」と義太夫節にのった上方特有のしっとりとした情感が所作に現れる。

小唄でも「あたためられつ」の詞が唄われる。

 落人の色香かくせど 梅川が
 ‎こごえる手先ふところへ 
 ‎あたためられつ あたためつ 
 ‎二十日餘りに四十両つかいはたして二分残る 
 ‎忍ぶ故里新口村へ

落人の二人が、黒地に梅模様の対の衣装で雪のなか…絵になる美しさ。
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「直侍」(雪暮夜入谷畦道)の方は、
裾を絡げて雪のぬかるみを歩き、火鉢にあたり、蕎麦を啜り、と、観ているうちにリアルな江戸に引き込まれる。
 舞台の上で本物の蕎麦を啜る。

どこで聞いたか忘れたが、
直次郎は、箸を立て気味に蕎麦を三、四本すくって、粋に啜らなくちゃいけない。
箸を横にして蕎麦を掬うと多過ぎて野暮ったい姿になるんだそうで。
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「冴えかえる春の寒さに降る雨も 暮れていつしか雪となり 上野の鐘の音も凍る…」
「一日逢わねば千日の 思いに私ゃ煩ろうて…」
悪事を重ねて追われる身の直次郎と、恋煩いの三千歳。
清元の他所事浄瑠璃が芝居に絡んで別れを描く。
ちなみにこの清元浄瑠璃「忍逢春雪解」の節付は、清元お葉。
江戸小唄を創めた人といわれている。

小唄「直侍」
 上野の鐘の音も凍る
 ‎春まだ寒き畦道に
 ‎つもるも恋の淡雪をよすがに
 ‎たどる入谷村
 ‎門の扉(とぼそ)に たちばなの
 ‎忍ぶ姿の直次郎
 
粋でイケメンの小悪党と清元節。
やっぱ黙阿弥イイわぁ、と明治のJKは言ったかなぁ。

タマ

「…切れるの、別れるのってそんなことはね、芸者の時にいうことよ。
今の私には、死ねといってください。」

劇団新派の「婦系図(おんなけいず)」
湯島天神の境内で主税から別れ話を切り出されたお蔦の台詞。
 泉鏡花の原作小説には無く、新派のオリジナル脚本とのこと。

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しかし、この場面なしには小唄も無ければ映画の主題歌のヒットもない。
 テレビの演芸番組で初代八重子さんの声色をやっていた声帯模写のオジサンは、どの台詞を使ったろう?

昭和の中頃までなら、多くの日本人が一度は聞いたことのある台詞のひとつ。
いまや、昭和も遠い昔。


◎「婦系図」の小唄


 「湯島境内」

久しぶり 髷も似合った
二人連れ
梅もほころぶ境内で
嬉しい思いも束の間に
義理にせかれた切れ話
お蔦が涙なくなくも
くぐる鳥居の影暗く
月もおぼろの春の宵

河上渓介 作
春日とよ 曲


 「上がる石段」

上がる石段 心もそぞろ
天神さまぇかこつけて
思いの闇の梅が香を
涙で結ぶ待ち人や
聞く声色も味気なく
あの月影の寒そうな
二人片羽の影と影



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こんばんは!りかです。
今日は小唄のお稽古に行ってきました。
立て込んでいた仕事がちょっと落ち着いたので、
昨日は着付けのお稽古、今日は小唄のお稽古。
なんだか贅沢してる気分です♪( ´▽`)
 
今日は来年の勉強会に向けて、先生から課題曲をいただきました。
弊ブログをご覧いただいている方ならご存じかもしれませんが、
11/9 のたまちゃん先生のブログ(明治一代女)にもありましたとおり、
今回の勉強会は新派のお芝居を題材にした小唄を歌います。
夏の勉強会での大失敗にしばらくやさぐれていた私。
さてさて、どうなりますことやら。 笑
とにかく頑張ってみます! 

今日のお師匠さん
(音合わせ中にパチリ。お師匠さんもたまちゃん先生も「あら??」って感じでしたが、
 素人には、この三味線の音合わせをされる姿がとっても素敵に見えるのです。)
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国立劇場11月公演
「仮名手本忠臣蔵」二部は「落人」から「一力茶屋」まで。
国立劇場ホームページには詳しい解説があって、はじめて歌舞伎を観る方にも親切。

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 さて、期待通りの美しい「おかる・勘平」の道行。
勘平の、最初の台詞の音から落人の気分が滲み出る。
若くて華やかな絵面だけれど、軽はずみを後悔して沈む心の内が見える。
 自害しようとする勘平を必死に止めるおかるの、ふと見せる女房ぶりに「いいなぁ、すごいなぁ」と感服。
 お師匠さんは、芝居のよさもだけど、衣装の扱いにも気を配っていて感心した、と仰っていた。
なるほど勘平の着物が白粉で汚れていない。
黒の無地に白粉がベタベタ付いていたら興醒めだし、衣装さんも苦労する。
 錦之助さん菊之助さんの取り合わせで、なにか他のものも観たいと思った。

 菊五郎さんの勘平腹切りは言うまでもないことだけど、
この場は、ほんとに良かった。
どの役も「やってますよ~」という五月蝿い芝居をしない。
それぞれの役の生業や役目がキチンとしている。
 勘平は若々しく、思いもよらぬ現実に愕然として身を縮め、思い悩み、思い込み、あっと言うまもなく腹に刀を突き立てる。
こんなに真っ直ぐな勘平だから、お客は泣ける。

 この悲しい場面から、賑やかな「一力茶屋」へ。
 これは、昼夜二回興行だとできない繋ぎ方だと思う。
一日一回上演の国立劇場ならではの贅沢な企画。

 吉右衛門さんの由良之助は、さすがに存在が大きい。
雀右衛門さんと又五郎さんの兄妹(おかる、平右衛門)も、それらしくて良い取り合わせ。
この先も楽しみ。

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ロビーでは五十周年記念のポスター展などもあって、売店も華やかで賑やかな気分。

 帰りに裏の伝統芸能情報館に寄ってみたところ、上演資料の展示の中に映像資料もあり、
たまたま見た「小萬 源五兵衞(盟三五大切)」に亡くなった辰之助さんの姿。
スッとした立ち姿、じっと堪えて微動だにしない形の美しさ。
 若くして亡くなって、客としては楽しみが減った。
あらためて、勿体なかったと思った。
生意気な言い方だけど…
タマ
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11月14日。
今夜のスーパームーンは、生憎の厚い雲のむこう。
昨晩は春の朧夜のような風情で、
薄衣を纏っていたけれど。

 春で朧、といえば
泉鏡花の小説「日本橋」
新派では二人の芸妓に重点をおいた芝居となっている。
 鏡花の台詞は美しくて、喋るほうは苦労するだろうけれど、とてもロマンチック。

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芝居の前段、
大正の始め、三月四日の夜。
 行方知れずの姉によく似た芸妓清葉に、長年の想いを打ち明けたものの「旦那以外に男は持たない」と。
傷心の医学士・葛木は一石橋から、雛に供えた栄螺と蛤を放す。
不審に思う巡査から尋問されるところへ、
同じく栄螺と蛤を放しにやってきた芸妓のお孝。
橋の上に朧月。


小唄「日本橋・上」

笛の音も
曇りがちなる弥生空
暗き思いに葛木が
断ち切る絆 川水へ
流す供養の雛まつり
つながる縁の西河岸は
春で朧でご縁日
お地蔵さまの御利生が
利いて御神酒の酔い心地
一石橋の達引も
意地が生命の左褄

伊東深水 作
春日とよ 曲


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中盤の、雪の一石橋の場面では、こんな小唄が使われている。

からかさの
骨はばらばら
紙や破れても
離れ離れまいぞえ
千鳥がけ


雪のなか傘さして送ってきたお孝と、常盤橋辺りから車で帰るという葛木。
離れたくないお孝。
 傘を車に見立てくるくる回して、自分も車に乗ってるところだ、と。
コミカルなシーンのあと、
物語は人間の心の闇、狂気、死へと向かう。


小唄「日本橋 下」

淡雪の消えてはかなき
春の宵
あかぬ別れも人の世の宿命(さだめ)としれど
口惜しく思い乱れて狂う身も
片身の謎の人形を抱いて寝る夜は明け易く
泣けて涙の花時雨
離ればなれのおしどりが
心の闇にふみ迷う
輪廻はつきぬ日本橋

伊東深水 作
春日とよ 曲

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以前「日本橋 上」を唄ってみたけれど、どうにも難しくて。

来年リベンジ!のつもり。
タマ

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