江戸芸能遊び

小唄と日本舞踊、着付けの稽古場「遊芸の稽古所・はしもと」の日々のお稽古やイベントのお知らせをしています。 「江戸の芸能で遊ぶ」楽しさをお伝えするブログです。
初心者にも分かりやすく本格的なお稽古をやってます。

着付け


袴姿で思い出すのは、
ある日、「娘の卒業式の袴の着付けを頼みたい」と友人からの相談。
 袴の着付けなんて簡単なんだから自分で着せれば?ということで。
 写真の通り、母は頑張りました。
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卒業式は無事に済んで、これも良い思い出となったはず。

袴といえば、
 古い話ですが、劇団の研究生になって、初めて関わった舞台で着付けを手伝いました。
シェイクスピアやラシーヌなんかやってる劇団なのに、この時は、なぜか鶴屋南北。
京都衣裳の着付師さんに殿様の着付けを教わって、まあ何とかなりました。
「袴の紐の畳み方が難しい」と言ったら、母は着付け教本をくれて、
「これ見て覚えなさーい」と。
このあたりからキモノとの付き合いが深くなってきました。
 二十代の終わり頃、呉服業界の仕事を請け負うことになり、着る機会が増えてからは自分で着るようになりました。
 この頃、キモノパーティーやショウの企画で関わった方が袴がお好きで、綺麗な色に染め分けた袴や、紬の袴を作っていらっしゃいました。
 この方のイベントにスタッフで参加するときには、用意された袴を着ていました。
中に着るキモノは短く端折っているし、帯は半幅ですし、実に動きやすい。

卒業式だけでなく、普段着にしてもいいように思います。
草履じゃなくても良いわけだし、モノによってはconverseなんか合わせてみても可愛いんじゃないかな。

こんなふうに、
羽織を合わせてもいい感じ。
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もう10年以上も前になるけれど、
長年、茶の湯の先生をしている方から
「誰かに聞いてみたかったんだけど、帯締めの結び方って左を上にするのが決まりなの?」と。
聞けば、どこぞのお茶会で結び方が逆だと指摘されたとのこと。
その話から、居合わせた他の先生も、着付けの先生に教えてもらった結び方が難しくてわからない、等々、、、
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 帯締めがこんなに問題になっていたとは知らなかった。
どっちが上との認識もなく、問屋でも売り場でディスプレイするにも結び目は本結びならOKだったと思う。
 1975年ごろのキモノの本がいくつかあったのでパラパラ見ても、どっちもアリ。
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 1990年頃になると、帯締めの結び方の項には「着物の合わせと同じように左側を上にして、、」との記述がある。
けれど、右が上になっている写真も掲載されているので、着付けを監修した教室の教え方だろうな、と思う。
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どっちでも良いと思うけれど、
もし、前述の先生のように結び方を指摘されたら気の毒なので、お茶会に行く人には左上で教えている。

 ちなみにウチの師匠は、いつも右が上になっています。自分で着物を着られるようになって70年以上、同じ向きで締めてる、と言ってます。

これを着崩れというなかれ。
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女物のキモノは、後ろ身ごろと袖を縫い合わせた下に身八つ口という隙間があって、ここに弛みがあれば、腕を動かしても生地が引き攣らず楽に動けます。

 ざっくり言えば、キモノというのは六枚の長方形の布をほぼ直線で縫い合わせて、これまた長方形の長い襟を塩梅良く縫い付けてあるだけの平たい衣服ですから凸凹のある体に纏うには緩みや隙間が無いとうまくいかない。

ある日、お師匠さんが言うには、
「きっと、最近着物の教室に通って着付けを覚えた人なんだろうけどね…」
…和光の洗面所で居合わせたその人から
「着崩れてるから直してあげましょう」と、身八つ口の弛みを帯の中に仕舞われた。
「えっ?」と思ったけど、

まさか、私は玄人で踊りを踊るからこんなふうに着物を着ています、と説明するのもナンだし、
「ありがとうございます」と言ってその場を離れて、仕舞われた分を急いで引き出したのよ、と。
面倒臭いからお礼を言っておいたけど、
あれじゃ、電車の吊り革も掴めないねぇ。
 何か間違ってるね、教え方が、と。


もう随分以前のことだけど、
この話をふと思い出したのは、

 たまに動画で見かける着付けの先生が「生徒さんたちにもっと気楽に着物をきてほしい」との気持ちから、ご自分の普段着の写真をブログか何かに載せたら、
 シワや着崩れのないキチンとした着姿を出すべきとのコメントがあった、というのを目にして、やれやれ気の毒に、と思ったから。

昭和の、まだ景気が良かった頃から呉服業界のお仕事をいただいたおかげで、
仮絵羽仕立てのキモノをクリップとピンを使って上手に着せつける写真撮影の着付師さんや、ブライダルショウの着付師さんなどの仕事を間近に見ることができました。
 着物のカタログ写真は、普通の着付けとは違うってことを教えてあげたほうがいいような気がする。

 普段に着物を着る人が減ったので仕方ないのかもしれないけれど、写真を撮るためだけのキモノでは楽しくないなぁ。

ゆかたを着ることが、コスプレになりかけていると知ったのはこの夏でした。
 まあ、楽しいのであれば、それも有りかな。

 慣れるということが一番の早道だと思って、キモノの着方を伝えているけど、まずは普段着で着慣れてほしい。
 いきなり出掛けるためにキモノを着ても所作がついて行かない。
緊張したり歩き方が気になったり…チグハグ。
 汚れても気にならない木綿のキモノやゆかたを着て、家の中で過ごしてみるのが一番。
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着付けの稽古のときは、着物を着てお茶を入れたりおやつを食べたり、ちょっと買い物に出たり、なるべくキモノで動く時間をつくっている。

 いつ頃だったか、橋本治氏が「振り袖を着れば美しい、わけではない」というようなこと書いていたけれど(ザックリしすぎた引用でごめんなさい)「そうそう、おっしゃるとおり」と思った。
 ある女形は、「今の女性は反面教師…」てなことを言っていた。
「確かにね」と思った。

 3メートル程先を綺麗なキモノの女性が横切ってゆくのを左から右へと目で追うと、なぜか…左足のふくらはぎが見える。
初めて遭遇したときはなにかの間違いだと思ったが、
近頃では珍しくない。
下着を簡略化したためだ。
「あ、コレか」と思ったのは、
裾に向かって斜めに前幅をカットした長襦袢モドキのような下着の上にキモノを着ている。
腰巻きと裾除けは省略。
 なるほど、歩いただけで脚がチラチラ。

将来、キモノはホントにコスプレになるのかもしれないけど、いまは昔ながらのキモノの着方にこだわって、その心地よさを伝えたいと思う。

タマ













 
 

 もう三十年も以前になるけれど、横浜駅の構内で浴衣を膝上丈に着た女子高生が闊歩しているのを見かけて、
 ‎自分なりに考えて、そこまで潔くやってくれればカッコイイし新鮮だと思った。
 若い人が‘自信なさげに、おばさん達の目を気にしながら浴衣を着ているのは気の毒。
自分なりの発想でモノにしたほうがいいんじゃない?って思う。
スタートはそれでいいと思う。
 ‎結果として、カッコイイか悪いかはバランス感覚というか、美意識の問題。
失敗しても何度でも試してみるといい。

 なかなか日常的にキモノを着る人は増えないだろうけど…以前よりはキモノで街歩きする人を見かけるようになった。
けれど、ちょっと窮屈そうなのは気の毒に思う。


 暑い季節は襟合わせをゆったりと、冬場はコートを着るので詰め気味に…という具合に季節に合わせて着たらいいと思う。
 梅雨時の蒸し暑い日には、まだ六月でも、稽古着は木綿の単衣を浴衣みたいに着て、帯は博多の八寸をお太鼓に結んでいる。
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それが特段変な着方とは思わない。
昔から、普段着はそんなだったように記憶している。

 キモノに慣れていくに従って、自分の体型や着崩れのクセのようなものもわかってくるし、着心地の良し悪しにも敏感になる。
 
 個人的には半衿の付け方が一番気になる。
後ろ姿で、キモノの衿から半襟が出っ張っているのは野暮ったい。
 半衿を襦袢に掛けるときは、必ず三河芯(木綿の芯)を使っている。
衿芯の背中心の寸法を10センチ程にすると、襦袢にかけたときにキモノの衿の内側に収まるので、衿芯を写真のようにカットしている。
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 キモノを自分で着はじめた頃、教える暇もない親が用意してくれたのは半衿の内側に差し込む方式のメッシュの樹脂みたいな衿芯だった。
首が短く鎖骨が太い丈夫なカラダなので、衿芯が鎖骨に当たって持ち上がり短い首が疲れる…肩が凝る…。

同じような衿芯を使っている人を後ろから見ると、半衿の内側に衿芯の段ができたうえにギャザーが寄って…前は良くても後姿は美しくない。
あぁ、これは嫌だなぁ、と。
 それがキッカケで、面倒だと思いつつも…必ず三河芯を縫い込む方式の半衿付けをしている。

タマ



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